2017年公開の韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』を観ました。
これまでゾンビ映画と聞いただけで敬遠していたのですが、わけあって観ることになったんですよ。
普段観ないジャンルということもあって新鮮な気持ちで観ることができたことや作品としても感動的なストーリーになっていて、これはいい映画でした。
やはり食わず嫌いはよくないですね。
興行収入がいくらとか、〇〇が絶賛という謳い文句はよく見ますが、この作品のおいてはその理由が分かるなと思える内容に仕上がっています。
目次
あらすじ
【?? #絶賛新感染 レビュー】『#新感染 ?』さらに楽しめよう!ぜひ、その感動をご自宅でもう一度!
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? 新感染 ファイナル・エクスプレス (@shinkansen0901) December 12, 2017
ソウル発プサン行きの高速鉄道KTXの車内で突如起こった感染爆発。
疾走する密室と化した列車の中で凶暴化する感染者たち。
感染すなわち、死ー。そんな列車に偶然乗り合わせたのは、妻のもとへ向かう父と幼い娘、出産間近の妻とその夫、そして高校生の恋人同士・・・
果たして彼らは安全な終着駅にたどり着くことができるのか―?
目的地まではあと2時間、時速300km、絶体絶命のサバイバル。愛するものを守るため、決死の闘いが今はじまる。
彼らの運命の行き先は・・・。『新感染 ファイナル・エクスプレス』公式HPより引用
電車の中という密室空間でゾンビが襲ってくるホラー映画でありながら、親子・夫婦・恋人という愛する者を守るためのアクションシーンも見どころの一つ。
韓国の役者さんて男女問わず美男美女が多いのもいいですね。
主演でもあるコン・ユさんはイケメンすぎます。
また高校生カップルの女の子は男に対して「運命を受け入れなさい」とグイグイいくあたりは羨ましい限りです。
ゾンビが襲ってくるという死と直面する状況でこそ人間の本性が見えてくるもので、たんなるホラー映画の枠に留まらずゾンビを題材にした人間物語と思って観ても十分楽しめる作品になっています。
ゾンビが象徴するものとは
この作品に登場するゾンビは俊敏でダッシュで追いかけてきます。暗闇に弱く音に反応しやすいのも特徴です。
ゾンビ映画にそんなに詳しいわけではないですが、アメリカ映画に出てくるような墓場から出てくるタイプのゾンビって動きが遅いじゃないですか。
ドラクエに出てくる腐った死体みたいなイメージがありました。
そしてだいたいゾンビは拳銃で撃っても死なない(すでに死んでるけどw)ので、バイオハザード的にいえばショットガンで顔面吹っ飛ばして息の根を止めるのが定石ですが、新感染では武器は木製バットぐらいで基本的には丸腰で突破していきます。
この点を見ても自分にとっては新鮮なゾンビ作品でした。
墓場から復活するゾンビといえば死にながらにして生きることへの情念が肉体を動かしていることが伝わってきます。
では、新感染のような俊敏なゾンビは何を表しているのでしょう。
肉体に関しては生きているときは変わっていないように見えます。
もしかしたら強化されているのかもしれませんが、少なくとも人間が素手で挑んで勝負になる相手なので戦闘能力はたいしたことないのはたしかです。
思考能力を失い、ひたすらに生きた人間に群がる姿は、どこか獲物を見つけると一斉になって袋叩きにする大衆心理に似ています。
SNSでの炎上が社会問題化する中で、炎上の要因になった人に一定の非を認めるとしてもそれが大衆から誹謗中傷されるほどのことなのかと疑いたくなってしまうような事例が後を絶ちません。
テラスハウスに出演していた木村花さんが亡くなってしまう原因にもなった誹謗中傷で一時は問題提起もされましたが、結局収まる気配すら見えない炎上事件を見ていると叩いている人にとって事の本質などどうでもよく、日ごろの憂さ晴らしをできれば誰でもいいわけです。
ネットの発達で多様な意見を得られるメリットもある反面、デマも拡散してしまうといったデメリットも問題になっています。
一度冷静になって自分の頭で考えてから行動すれば分かりそうなことも思考停止状態の人にとっては通用しません。
赤信号みんなで渡れば怖くないじゃないですが、SNSという匿名空間ではそこが赤信号であるという意識すらないのかもしれません。
それぞれの人間関係がゾンビに立ち向かう勇気になる
さきほどゾンビを題材にした人間物語が見どころであると言いました。
『新感染』という映画がたんなるゾンビ映画の枠を超えて高い評価を得ている原因は間違いなくここにあります。
家庭を省みず仕事に没頭しているうちに家族が崩壊してしまった親子、妊娠中の妻とその夫、高校生のカップル。
それぞれに愛する者がいます。
目の前にゾンビが現れたらと思うと自分一人だったら足がすくんでしまいそうです。
でも愛する人を守るためだと思えば前に進む以外に選択肢はないと割り切れる気がします。
その感情は人間には自らの命よりも大切なものがあることに気づかされます。
高校生カップルの女の子がゾンビに感染していることが発覚したとき、彼は逃げることなく彼女を抱きしめたことで自身もゾンビに感染しました。
その姿を見て純粋に感動するとともに、きっと自分も同じ立場であったとしたら同じことをしたと思います。
人はいつか必ず死ぬにも関わらず、いざ死に直面すると死にたくないと思うものです(実際に体感したことはありませんが)。
でも、その生きることへの執着は愛する人を殺してまで得たいものだとはどうしても思えません。
彼にとってあそこで彼女を抱きしめることは必然であり、それ以外に選択肢などなかったはずです。
コン・ユ演じる父も感染したことが分かると自らの意思で飛び降りる決断をします。
死ぬ直前、父は子供が初めて抱いたときのことを思い出し、幸せそうな笑みを浮かべながら身を投じました。
死への恐怖、生への執着、このどちらもゾンビに感染して意識が残っているわずかな時間においては超越した感情を抱いていることが分かります。
この二人の行動を見て、なぜ人間はもっと素直になれないのだろうと思ってしまいます。
高校生カップルにしてもお互い好きな者同士なことは分かっていたはずなのに彼は素直になれずにいました。
父は仕事に明け暮れ大切な子供を妻に渡さなければいけない事態にまで発展してしまった。でも実際は、子供のために命がけでゾンビと戦うほど愛していたわけです。
もちろん毎日を緊急事態だと思って過ごせるわけないことは分かっています。
分かっているのですが、お互いの愛を確かめ合ったときにはもう遅すぎたんです。
北野武監督は自身の作品にバイオレンス作品が多いことに対して
「振り子のようなもので死のほうに振ると反動で生を表現できる」
と語っていました。
死という極限状態を感じることで生きたいという感情や愛を感じ取ることができるということでしょう。
ゾンビに襲われるという極限状態だからこそ普段は言えない素直な気持ちを表現できているシーンを見ていると、もっと日頃から素直に自分の感情を伝えることの大切さを痛感する映画でした。
自分ならどうする? を自問自答させられる映画
一見すると非情な行動も自分が同じ立場になったとすれば否定できないなと思ってしまうシーンがあります。
父コン・ユは妊婦の妻とその夫がゾンビに追われてきたときに一度ドアを閉めています。
これは自分一人の命であればドアを閉めなかったでしょう。ですが、他の多くの乗客の命を考えると閉めたことを責められません。
しかし、娘が席を譲ったことに対して自分のことだけを考えていればいいと諭します。
このシーンはコン・ユが自己中心的なキャラであることを差し引いても違和感を感じてしまいます。
これは原作本によるとコン・ユ演じるソグの父が連帯保証人になったことでソグが高校一年のときに自殺していることが要因になっているようです。
他人を優先した結末が父の自殺だったからこそ、娘には他人よりも自分を優先するように教育するし、お金がないことへの恐怖が仕事でお金を稼ぐことこそが家族のためになると信じることに繋がったのでしょう。
この裏設定が分かると非情な父というイメージから、彼には彼なりの愛があったのだと分かります。
だからこそ最後には自分よりも娘の命を優先する行動をとったわけです。
このとき自分ならどうする?
何度も自問自答させられる映画でした。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』を見るならHulu
動画配信サイトではHuluで公開されています。
無料期間もあるので、まだ見ていない方はこちらからどうぞ。
見てないのにここまで読んでしまった人はだいぶネタバレしてますけどねw
まとめ
最後まで観終わってみるとゾンビ映画を観たとは思えないほど感動してしまいました。
韓国映画ってストーリー展開はベタなものが多い印象ですが、分かりやすい構成の中でもしっかり人間のかっこよさ、醜さが描かれていてちゃんと感情移入できるようになっているところが高い評価に繋がった要因でしょう。
率直にいい映画でした。
この作品を紹介してくれた人には感謝しなきゃいけないですね。
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