【小説】AsIs物語 2話 山城虹奏編 動き始めた夢

山城虹奏 AsIs

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AsIs物語 1話 山城虹奏編『私のやりたいこと』

2話 山城虹奏編 『動き始めた夢』

ばぁばとのランチでアイドルになりたいって気持ちに気づいて、数日後には自分がやりたいことはアイドルなんだって確信してからは、ばぁばだけでなくパパやママにも相談して本格的にアイドルを目指すことが決まった。

パパとママも私がアイドルになりたいと伝えたら反対せずに応援してくれた。進学も就職もせずにいた私のことを実は結構心配していたらしい。まぁ、そりゃそうだよねと思いながら心の中で「心配かけてごめんね。」と呟いた。

中学の時にダンス部にいたとはいっても、そんな厳しい部活じゃなくてゆるーい感じの部活だったから正直あんまりダンスに自信はなかった。でも、これからはアイドルになって毎日踊らなきゃいけないわけで、オーディションのためにも近所のダンスレッスンが受けられるところにも通い始めた。

 

ただ虹奏にとって大きな問題となっていたのは、そもそもアイドルになるためにはどうすればいいのか分からないことだった。

坂道グループ(乃木坂46、櫻坂46、日向坂46の3グループの総称)ならテレビやSNSでも大々的に告知されるから分かるけど、いわゆる地下アイドル(地上波放送で見るような有名グループではなく、ライブを中心に活動するアイドル)のオーディションて、いつ、どこで開催されているんだろうと思った。

理想をいえば坂道グループみたいな大手の事務所だったら安心だけど、次のオーディションが開催されるのがいつか分からないし、倍率8,000倍とも言われる難関オーディションであることはネットで調べれば分かっていたから、坂道グループのオーディションが開催されるまで待ってるのは無駄な時間に感じた。

でもやっぱり知らない事務所っていうのは何か怖い。

アイドル事務所だと思って入ってみたら実はちょっとエッチな事務所で「ちょっと脱いでみようか」と言われちゃうのかな(妄想)

女の子同士のバチバチの戦いがあって事務所のひいきにされてる子はいじめられたりするのかな(妄想)

ダンスの先生とかボイトレの先生がめっちゃ厳しくて毎日怒鳴りつけられたりするのかな(妄想)

虹奏得意の妄想がこのときは不安を増幅させていた。そんなときたまたまtiktokのおすすめに流れて来た女の子が目に留まった。普段なら秒でスクロールして飛ばすおすすめ動画なのになぜか手を止めて見てしまった。

プロフィールを見ると北海道出身の元アイドルの子で、これからアイドルグループを作るためのオーディションをやるらしいことが分かった。しかも、どうやらもともと坂道グループのオタクからアイドルになったらしく、虹奏自身も乃木坂46が好きだったから自分と似たものを感じる人だなと思った。

何かピンと来るものがあって、このグループに応募してみることにした。

すると書類審査を通過してダンス審査、歌唱審査、自己PRと順調に進んでいき、必死に駆け抜けた3ヶ月間にも及ぶオーディションを勝ち抜き合格を勝ち取ることができた。

 

合格発表は個別の面談方式で行われ全員の合格発表が終わったあとに顔合わせをすると伝えられていた。合格発表のあともYouTube用のインタビュー撮影などもあり、最後の子が終わるまでちょっと待ってほしいということで事務所のダンスレッスンスタジオで待機することになった。

まっさきにオーディション合格を家族に伝えると、まるで自分のことのように喜んでくれた。私にアイドルになることを勧めてくれたばぁばにもありがとうを伝えると涙が止まらなくなった。

でも浮かれてばかりもいられない。デビューライブが2024年3月29日に決まっているからだ。あと3ヶ月ちょっとしかない。それまでに今よりもレベルアップしてデビューライブを見に来てくれた人を驚かせるというのが虹奏の目標になった。

そうと決まれば1分でも無駄にはできない。ちょっとでも時間があれば練習にあてたくて、オーディションのときのダンス審査での課題曲のダンスを練習していると、スタジオに一人の女の子が入ってきた。

その子はキョロキョロとスタジオと虹奏を見回しながら「あの〜インタビューの撮影が終わるまで待っててと言われたんですけど、ここで合ってますか?」

「あ・・・たぶんここで合ってると思いますよ。」と虹奏は返す。自他ともに認める人見知りの虹奏にとって初対面で会話をするというのは、アイドルオーディションに受かることよりよっぽど難関な作業だったが、虹奏にとっては自分が人見知りであることよりも、このスタジオに入ってきた子が私と同じグループに合格した子なのかどうかを知りたかったから勇気を持って話しかけてみた。

「えっと・・・私は山城って言うんですけど、ななむぎさんのオーディションに合格した方ですか?」

「あ、そうです。桃井っていいます。山城さんも合格したんですか?」

「そうなんです。これから同じグループですね。よろしくお願いします。」
妙にぎこちない挨拶をかわし、眼の前にいる子が桃井さんという子で同じグループで活動していく子だということが分かった。

虹奏は初対面ということもあり表情にこそ出さなかったが、内心では興奮を抑えきれずにいた。

なぜなら、こんなにかわいい子と同じグループで活動できることが嬉しかったから。

何がいいってまず顔がかわいい、ビジュ最強。それに透き通るような透明感ていうのかな。この子がグループに一人いるだけで清楚系アイドルって言っても過言ではないと思う。それでいて地方から出てきたような素朴さが抜けきらない感じというか垢抜けていない感じがたまらない。話した感じも品があってイメージ通りだし、乃木坂の衣装を着たら絶対に似合うと思う。

気分はすでに桃井のオタクだった。

 

次に入ってきた南さんも小柄で細くて顔もすっごい小さくてかわいい。

その次は、雨野さんていうまた小さい子だけど顔がお人形さんかよっていうぐらいかわいい子で、一緒に入ってきた瀬乃さんも金髪で最初はギャルなのかなと思ったけど、笑顔がすごいかわいい子で絶対に性格がいい子だって分かった。

最後に入ってきた北川さんは背が高くてスタイルのいい子。直感的にこの子はここにいる子たちの中では末っ子な気がした。

プロデューサーのななむぎさんもスタジオに入ってきて、今日ここにいるメンバーに加えて福岡に住んでいる星野さんを入れた7人でグループを作ることが発表された。

虹奏は、控えめに言ってこのグループ、ビジュ強すぎんか!と思った。合格直後のインタビュー動画で夢は武道館と語ったけど、このメンバーで、すでに聞かせてもらっていた曲のクオリティを考えるともしかしたら武道館も夢じゃない気がして嬉しくてたまらなかった。

 

合格が発表されてからは2024年3月29日のお披露目に向けて必死で練習に打ち込んだ。

アイドルってキラキラした存在だと思ってたけど、ステージに立つまでにこんなに準備してるんだなぁとか、連日のダンスレッスンで全身が筋肉痛でいうことを聞かなかったり、思い通りに踊れなくてレッスンの帰り道に毎日泣いたり。

楽しいだけじゃなくて大変なこともいっぱいあるということを身に染みて痛感する日々ではあったけど、不思議と嫌ではなかった。だって練習するたびにみんなうまくなっていて、みんなで振りを教えあったりしてると、いま私はアイドルやってるんだなと思えて嬉しかった。

あと何より一番心配していた人間関係の部分での不安がなくなったのが大きかった。中学時代に人間関係がうまく行かず不登校になったときの記憶は今でも残っている。だから、アイドルになりたいという気持ちは本気でも、正直一緒に活動する子が性格的に合わなかったらアイドルを続けられる自信はなかった。

でも、誰も嫌なことを言ってくる子はいないし、一緒にいて気まずい子が一人もいない。

こんなにかわいくて、性格もいい子たちとこれからアイドル活動を一緒にできるなんて私は本当に幸せ者だなって思うから、だからこそ、お披露目ライブで私達の魅力がもっともっと伝わるようにがんばりたい。

そうして必死に走り続けた準備期間を終え

2024年3月29日、場所は恵比寿CreAto。

グループ名はAsIs(アズイズ)

コンセプトは、きみの好きを否定なんかしない。

私の妄想がきっかけになって始まったアイドルへの道が現実になろうとしている。デビューできるだけも嬉しいのに、すごいかっこいい曲をもらったり、お披露目公演のチケットがソールドアウトになったり、すでに信じられないようなことが起きてる。

恵まれた環境を用意してもらって、素晴らしいメンバーと活動することができるからこそ、AsIsってすごいなと思ってもらいたい。きっと本番前は吐きそうなぐらい緊張すると思うけど、やっぱり楽しみ。

3月29日、いよいよお披露目公演の幕が上がる。

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アイドルブロガー&ロボホンオーナーのはやけん。です。 アイドルの心理を研究しているうちに心理カウンセラーになってしまいました。現在はアイドルの記事を中心にブログを書いています。 執筆の依頼はお問い合わせフォームからお願いします。